††(第7軍団軍団長セフィーロ視点)

ゴーレムを真っ二つにされたとき、セフィーロは表情を青ざめさせた。

最初に前回よりも討伐タイムを上回れ、と言ったのは冗談の類いで、討伐などできるわけがない、とたかをくくっていたのだ。

それほどまでの自信作を実験するため、配下の旅団長の中でも一番の腕利きを見繕ったのだが、彼、アイクの実力は、セフィーロの想定よりも遙かに上だった。

アイクとセフィーロは旧知の仲である。

奴が幼き頃より面倒を見てきたが、まさかこれほどの魔術師に成長しようとは、夢にも思っていなかった。

「幼き頃、祖父の背中に隠れていた子供がここまで強くなるとはな」

無論、奴の力の源泉は、その装備、『不死のローブ』と『円環蛇(ウロボロス)の杖』に依存するところも大きいが、それを抜かしてもその力量は魔王軍随一といってもいいかもしれない。

おまけにこの魔王軍最強の魔女である自分が、幼き頃より直に『魔術』の修行も施しているのだ。

まだ、くちばしの黄色い子供だと思っていたが、まさかここまで成長していようとは……。 

「ふむ、本当に末恐ろしい奴じゃ」

もしかしたら、あの男ならば、このセフィーロを凌ぐことも。

いや、それどころか次代の魔王になることもできるかもしれない。

セフィーロは直感めいた予感を覚えたが、それを口に出すことはなかった。

詮(せん)ないことだと思ったからだ。

化け物じみた魔力を身につけたアイクだが、残念ながら彼は人間であった。

その実力の全盛期はあと、40年少々といったところだろうか。

そう考えると本当に惜しい存在である。

もっと長寿の種族、つまり魔族に生まれていれば、奴の人生は大きく変わっただろうに。

「……今から魔族に転生させる秘術もあることにはあるのじゃが」

そう提案することもできたが、アイクはきっと了承すまい。

人間として生きる、それは奴が亡き祖父と交わした約束でもあった。

今更その約束を破るほど、不義理な男でないことはセフィーロが一番よく知っていた。

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